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ささやかな冒険

あれは幾つの頃だろう。
中学1年生だったかな・・・。

横浜に住んでいた叔父の家に遊びに行くのが僕は大好きだった。





僕には兄弟がいない。
6つ年下のいとこ(男の子)との時間はまるで弟が出来たように楽しかったし、かつて船乗りだった叔父のお洒落な雰囲気にも憧憬の念を抱いていたのかもしれない。

泊まりで遊びに行っていたある時の事。
叔父は中古車店を経営していたので日曜日はもちろん休みではなく、僕たち二人は時間を持て余していた。
そこでどういう話の成り行きだかは詳らかに覚えていないのだが、とにかく今度の日曜は三浦半島の突端、城ヶ島という所へそのいとこと二人で「探検」に出かける事になった。

中学1年と小学1年の二人だけで、自分達だけで海へ行く!
ささやかではあるが、僕たちにとってはとてつもない冒険。
しかしそれは叔父叔母にとってもとんでもない冒険でもあるのだが・・・。
僕もいとこもそれだけでわくわくする気持ちを抑えられないほどだったが、叔父叔母は実の所心配だったろう。
それでも叔父の「気をつけて行って来い」の言葉に送られて、僕たちの「スタンドバイミー」は始まった。

京浜急行という私鉄に乗って1時間ほど。
いとこのリュックには叔母に作って貰ったおにぎり二人分、そしていとこの右手と僕の左手はしっかりとつないだまま、ガタゴトと電車に揺られる。
山がちな市街地を抜け、車窓左手に海が広がった時、声にならない感動があったように思う。

終点「三崎口」からはさらにバスに揺られること20分。
目的地の「城ヶ島」についた頃には、もう日も高く上っていた。

島を一周できるハイキングコースの案内板に従って道を進むが、じゃれあった子犬が歩いているようなもので、ちっとも前になんて進まない。
洞窟があればとりあえず覘き、高台があれば遥か沖の船を遠望し、岩場の潮溜まりではかにと戯れ・・・あっという間に過ぎ去る時間だった。
せっかく作ってくれた叔母のおにぎりなんて、いつ食べたかも覚えていない・・・それほど夢中になって僕らは遊んだ。

気がつけば日も傾き、いささか遊び疲れた僕らは潮っぽくなった顔のまま、もと来た道をたどった。

再びバスに揺られ、電車に乗り・・・電車が走り出してしばらくするといとこはすぐに眠ってしまった。
僕もものすごく眠かったのだが、にわか兄貴としては寝過ごしたりしたらまずいと思い、必死になって耐えた。

駅まで叔母が迎えにきてくれた。
叔母の顔を見た時、何だかものすごくほっとした・・・。
叔母としては実の所はわが子が一番心配だったのだろうけど、疲れた僕には本当に嬉しかった。

少し早めに仕事を終え帰宅した叔父との夕食。
叔父の大好きな刺身が並んでいたテーブル越しに叔父は言った。
「かず、疲れたろう。ご苦労さんだったな・・・」
不意に瞼の奥から涙が溢れそうになった自分を・・・何故だか今もはっきり覚えている。


回想録になってしまいました。
30年前の僕といとこのスタンドバイミー。
来月、そのいとこや叔母と会います。

叔父の7回忌です・・・。
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by kazz1125 | 2006-06-02 09:09 | 雑感


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