夏 七題

線香花火
儚い火花を見ている時、さっきまではしゃいでいたあなたが何故かしら黙っている事に気づいた・・・。
ポトリと火花が堕ちるのと同時に再びの闇が訪れた。
あなたは聞こえないほどの小さな溜息をついた。

浴衣
夏祭り。待ち合わせの狛犬の横で浴衣がけの君はもう待っていてくれた。
思いもかけない素足と脛の白さ。慌てて目をそらした。
君は不思議そうに僕の顔を見た。

打ち水
傾き始めた夕陽に追われる様に急ぎ足で家路を急いだ。
汗びっしょりで家へ辿り着いたら、丁度母さんが打ち水をしている所だった。
太陽と埃の匂い。

「お帰り、早いとこお風呂に入っちゃいな」・・・

ひまわり
空の青さに負けないだけの鮮やかさで、君はいつも太陽に立ち向かうね。
僕がどうしても未だに理解できないのは、君と太陽の関係だ。

入道雲
余りの暑さに急に空が怒り出した。
怒りも露わにどんどんとその姿を変えてゆく。
遥か彼方の雷鳴。
降り出す前に、降り出す前に何かを・・・。
何もする事など無い筈なのに、いつもあせり始めて。


夕暮れ時。橙から紫。紫から闇へ。
明るさと暗さの鬩ぎ合い。
蜩が鳴き出したら、それはもう夜の勝ちだ。
夏の夕暮れに夜の帳を運んでくるのは彼らの仕事だからね。

カブトムシ
いつもゴソゴソと動き回る黒塗りの重戦車。
スイカの皮が透けるほどの食欲。
この世界は君には少し狭すぎるようだね。
僕は虫かごを開けて、真夏の空へ放った。
「アディオス、セニョール」
何でスペイン語なんだろう。
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by kazz1125 | 2006-07-05 01:02 | 風景


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