笑い声の向う

久し振りの遠出に
母はいつも以上にはしゃいでいた

大好きなお蕎麦を口に運びながら
笑いながら話す
僕の子どもの頃のあれこれ

孫である僕の長女も
何度も聞いたはずのその話に
まるで初めて聞いたように
ニコニコと相槌を打っている

信州の
古びたお蕎麦屋さんの小さな座卓には
冬の日の陽だまりの様に
ささやかな幸せが留まっていた

もう何度も話されているのに
その度に
大笑いできるこの話が聞けなくなる日も
おそらくそう遠い将来ではないはずだよな

母と娘の笑い声を聞きながら
そんな事を思っていたら
不意にこみ上げてきた涙

薬味の大根おろしに
むせたふりをして誤魔化したのは
少しでも時を
留めておきたいと言う
叶わぬ願いだったのかもしれない
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by kazz1125 | 2008-11-08 10:08 |


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