昨夜の雪で少し濡れた
駅のコンコースを僕は急いでいた
不意に聞こえた
「お父さん、抱っこ!」の声に
思わず僕が言われたような気がして
足を止めた
振り返ると
幼い女の子が
ニコニコと父親に手を差し伸べている
父親は仕方がないなぁという
微妙な笑みを浮かべながらも
それでも今しかない
その幸せを享受するが如く
しっかりと娘の体重を受け止めていた
思わず知らず僕も笑みが零れたのだが
同時にこみ上げて来たのは
喩えようの無い寂寞感
僕が・・
僕が最後にあいつらを
「抱っこ」したのはいつだったんだろうな
あの頃あった
無心のささやかな幸せ
再び歩き始めた
ひどく冷え切ったコンコースは
少し霞んで見えた
by kazz1125
| 2008-02-10 18:20
| 心
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